思春期医療への興味がきっかけ

 今、幼児虐待やいじめ、凶悪な少年犯罪が問題になっている。背景には、思春期教育や思春期医療の遅れが少なからず影響していると指摘する声もある。青山医師が産婦人科医をめざしたのは、そうした思春期の子どもが持つ悩みや迷いがきっかけだった。

 「思春期は自分の体のことや相手のことも良くわからないし、精神的に不安定になりやすい。本来、大人が教えないといけないことですが、現実は必ずしもそうなっていません。子どもが悩んだりつらい思いをすることなく、世の中がもっと良くなるには性に対する正しい知識や理解、思春期医療が重要だと今でも思っています」

 産婦人科医になって15年余り。出身地である富山県内の拠点病院などを経て、9年前から能登半島の輪島に勤務する。「思春期医療は一か所に長くとどまることが重要。自分がめざす医療が展開できる」と考えて赴任した。輪島で家族を持ったことも支えになっている。

 一人医長の青山医師が、やりたい医療として輪島で最初に取り組んだのがフリースタイル分娩。分娩台に足を固定し、あおむけで出産する従来のスタイルではなく、患者の好きな姿勢で自由にお産をする。多いのは横向きの出産だ。できるだけ医療が介入せず、限りなく自然な分娩をめざして“待つ出産”を推進する。

 「出産にリスクはつきものですが今、全国平均で約20%が帝王切開です。当院の帝王切開率は去年は8%、2年前は5.8%。安全な出産をするためにも、できるだけ医療介入しないで自然な分娩にもっていく努力をしています」

 産婦人科は医療訴訟が多いといわれるが、リスクを過度に回避するあまり不必要な医療介入が増えることは、母子にとって必ずしも好ましくはない。輪島病院は、2008年にWHO(世界保健機関)ユニセフ(国連児童基金)から「赤ちゃんにやさしい病院」(Baby Friendly Hospital)の認定を受けた。母子同室で、母乳で育てることを支援している。

 青山医師は「若い人たちには、もっと産婦人科医の魅力を伝えたい。いかに患者さんに快適で、苦痛がなく、満足できる医療を提供するか。それが二人目、三人目の出産にもつながる」と訴える。地域医療の現場で新しい生命を支えつつ、「仲間を増やし、行政にも働きかけて公の活動としてやっていく」と、思春期医療にも意欲を燃やしている。