産婦人科は人生のすべてを見通すことが出来る場所。

 暖かい春の日差しが降り注いでいる中で原稿を書いていますが、新たな門出、新しい息吹が感じられる頃です。
 産婦人科は人生のすべてを見通すことが出来る場所と言えます。それは今日のような新しい命が今まさに芽生えようとする状況から始まります。卵胞という卵の発育を超音波で観察し、不妊の場合にはシャーレの中で受精させ、子宮に戻し、成功裏に胎児心拍が見られた時は医療者、患者家族ともに感動を覚えます。そして妊娠の時期を過ぎて分娩で新しい人生が始まります。
 患者さんは思春期となれば生理関連での悩み、その後不妊症や筋腫、内膜症の発生で心配し、中年以降では癌に戦いを挑み、そして最後に旅立つ。産婦人科ではそのすべてを共に共感し克服するお手伝いができます。まさに人生の体験です。自分自身の人生も一度も途切れる事の無い連綿として続いて来た命の連鎖のお陰であることに感じ入り、親、家族や地域社会から育てられてこの時に至っている事を実感して真に心の成長を遂げることでしょう。
 当院では腹腔鏡を用いてほとんどの手術を低侵襲にしています。あの大きな開腹の手術創や術後の苦しみは一体何だったんだろうか?こんなに早く日常生活に復帰できるなんて!より素敵な人生としてあげるべく自分は良い事をしている!と毎日喜びを新たにする事ができます。国際学会などで知見を広める事も自分自身を大きくします。
 皆さんは期待もあるが不安もいっぱいという状況だと思いますが、この感動を味わってみませんか?

石川県立中央病院産婦人科

干場 勉先生

いつまでも挑戦心を掻き立てられ続けます。

 皆さんはどうして医者になろうと思いましたか?私は人の役に立てる仕事だと思い医者を目指しました。患者さんの喜んでいる顔が見たいし、それが苦しい業務を乗り越える自分の支えになります。
 実際の医療の現場はどうでしたか?真面目な厳しい顔をしている時間が長いですよね。でも産婦人科では「おめでとう」「ありがとう」という会話が飛び交い、笑顔で仕事が出来ます。
 医者になったからには早く一人前になりたいと思いませんか?帝王切開の執刀は基本的に若手の仕事ですから、すぐに執刀医として手術に参加することが出来ます。その一方で婦人科癌や腹腔鏡手術では修得することの難しい術式もあり、いつまでも挑戦心を掻き立てられ続けます。
 妊娠や育児などの際にハードに働き続けるのも難しいと思いませんか?不妊治療や女性医学という分野では外来での仕事が主体となり、勤務時間を調整することも可能です。
 今私たちは皆さんのような若い力を心から必要としています。このような素敵な職場で、ぜひ一緒に働きましょう。

富山県済生会高岡病院産婦人科

吉本 英生先生

高度生殖医療において日々研究を行っています。

 産婦人科が他の科と大きく異なる点に、妊娠および出産を扱う点があります。その中でも当院は不妊治療専門施設として、体外受精・顕微授精を中心とした高度生殖医療に特化して治療を行っています。一般的に不妊治療を行う場合、排卵誘発剤を多量に使用することが多いですが、副作用を最小限に抑え良好卵子を回収する目的で、排卵誘発は極力少量の薬剤使用で行っています。また複数個の胚を移植することにより、多胎妊娠のリスクが高まるため、全例単一胚移植を行い、多胎妊娠予防に努めています。開院当初の採卵数は年間約2,500件でしたが、2013年の実績では採卵数26,869件、移植数15,412件でした。また開院後20年間の累積出生児数は2012年に30,317名に達しました。
 当院は西新宿にあるため、金沢とは地理的に離れていますが、北陸新幹線の開業によって移動は格段に便利になったので、見学を希望の方、また初期研修医で不妊治療の研修を希望の方は是非一度遊びに来てもらえればと思います。

加藤レディスクリニック院長

加藤 恵一先生

様々な面で大きく改善されつつあります。

 皆さんは産婦人科にどのようなイメージをお持ちでしょうか。産婦人科は他科で経験することの出来ない「生命の誕生」の感動に出会える、やりがいある本当に魅力的な科です。
 私は14年前に産科クリニックを開業し、これまでに約1万件の分娩に立ち会いました。お産を終えたお母さんの笑顔や新生児の産声は、何ものにも代え難い喜びがあります。
 ご存じのように医療業界の情勢は年々厳しくなり、医師全体の未来は決して明るいものとは断言できません。特に産科は当直や呼出が多く拘束される上に、他科と比べて訴訟リスクが高い科といったマイナスイメージを持たれていると思います。しかし、産科医に対する需要は年々増加し、待遇も様々な面で大きく改善されつつあります。一人の医師が全責任を負うのではなく、複数の医師でチームを組んで周産期医療を行う時代に必ずなると思います。オンとオフがはっきりし休日も十分にとれるようになるでしょう。そういった意味でもこれからの産婦人科は大変魅力ある科ではないでしょうか。
 一人でも多くのやる気のある方が産婦人科を専門とし、日本の周産期医療の力となっていただければと願っています。

産科婦人科佐川クリニック

佐川 哲生先生

人間が世代交代しながら生き続けるという、自然の摂理を感じることができる。

 人間において、個体は、常に構成元素を入れ替え、体の壊れた部分を治しています。そうしていてもやはり体に障害が起きて、最終的には死に至ります。そこでまるごと新しく作り替えて、子供として生き残るこれが生殖です。
 内科や外科をはじめとするほとんどの医療は障害の起こった個体を対象とします。しかし、例外は生殖を扱う産婦人科医療です。私は、生殖のもつ継続性からくる、明るさ、希望などに魅かれ、産婦人科医を選択しました。
 例えば、不妊症治療の過程で、超音波断層でちょうど観察していた卵胞が排卵、授精し、妊娠することがあります。やがて、胎嚢、胎児心拍が見え、その胎児の発育を観察する間に、分娩というイベントを経て、啼泣し、手足を動かす新生児を手に感じることができます。さらに、この新生児が女の子の場合には、成長、妊娠、分娩し、次の世代の新生児を見ることも時には経験します。
 このように日々の診療の中にも、人間が世代交代しながら生き続けるという、自然の摂理を感じることができるように思います。これが産婦人科医療の大きな魅力の一つであり、また、医師生活を続けていく原動力となっていきます。皆さんもぜひ体験してみてください。

市立敦賀病院産婦人科

山崎 洋先生

これからの生殖医療、生命の神秘の世界で活躍してくれることを切に願っています。

 体外受精という言葉がまだ珍しかった1990年に、北陸初の不妊治療専門施設としてスタートした私達のクリニックは、今年で創立25周年を迎え、累積出生児数は6500人を超えました。
 この四半世紀にART(補助生殖医療)は、顕微授精、精巣精子採取、ガラス化保存、胚盤法培養など革新的な技術開発を背景に、不妊症に対するスタンダードな治療法として確立され、産婦人科医療に於いて重要な役割を果たすようになったと思います。胚の診断もタイムラプス撮影を用いた動的評価が可能になり、機材や培養液、使用薬剤も随時改良されていますが、治療女性の高齢化に伴う卵子の質低下により、難治症例が増えている現状です。
 日本の少子化対策のためにもARTはさらに安全で質の高い医療に進歩すべき責務を担っています。
 若い意欲的な医師の皆さんが、これからの生殖医療、生命の神秘の世界で活躍してくれることを切に願っています。

医療法人社団康仁会金沢たまごクリニック・
永遠幸レディスクリニック

道倉 康仁先生

自分の妊娠、出産、育児の経験が生かせる。

 医師となり10年目の平成17年4月に開院しました。当院は「すべての女性の幸せのために、すべては女性の幸せのために」がメインコンセプトの、地域医療に根付いた産婦人科です。正常妊娠・分娩を扱う産科と一次的な婦人科医療を行っています。婦人科に関しては敷居の低い誰でも気軽に受診できるクリニックであること、高次施設への橋渡しを円滑に行うことが目標です。
 日々、老若さまざまな方が受診されます。産科に関しては、近年、分娩できる診療所が減少したため、少子化にもかかわらず、分娩件数は減少することはなく昨年11月には分娩件数が6000件を超えました。当院では妊娠・出産・育児を一環として支援していけるよう、充実した母親教室、授乳支援、産後の親子サークルなど工夫を凝らしています。自分の妊娠、出産、育児の経験が生かせる今の仕事が生きがいですし、これからも「女性の幸せ」を念頭に日々邁進していきたいと思います。

吉本レディースクリニック

吉本 裕子先生

「当たり前の診療」が一番難しい。

 私は卒後約20年が経過し、一般病院と大学での研修・研究を経て、10年前に現在の病院に着任しました。当院は産科と婦人科を大きく区別することなく、思春期から周産期、更年期から看取りまで、幅広く女性の一生に関わる診療を行っています。一般総合病院であるため大学病院のような先進・専門性やクリニックのように快適なアメニティーを追求することは不可能なのですが、日々接する多くの女性患者さんが求める診療を提供することが可能です。
 「当たり前の出産」や「当たり前の手術」に対応できる医師になること、現代日本ではまさにこれが一番難しいのではないかと感じています。
 当院でまずこの「当たり前の診療」ができる心と技術を身に付けることを目標として、次なるステップを目指していただきたいと考えています。若い先生達とともに仕事ができる日々を願いつつ、私自身は目の前の患者さんの診療に専念します。

金沢医療センター産科・婦人科

金谷 太郎先生

生命を紡ぐ産婦人科の医療を担って下さい。

 医師としての進路を考えている皆さん、我々と一緒に産婦人科をやりませんか?当院は産科・新生児科を主体に南加賀地区の周産期医療に取り組んでいます。安心して妊娠・出産・育児に臨めるように適切な診断と治療を行い、できる限りの相談に応じています。
 新しい命がこの世に誕生することは、とても大切ですし、すべての人間としての生活がここから始まります。新しい命が継続して誕生しなければ、人間の社会は立ち行かなくなり、滅びていきます。現在、日本は深刻な少子化が進んでいますが、社会全体が人口減少を食い止める方法を模索しています。この中で、産婦人科は新しい命を無事に誕生させるための重要な役割を担っています。少子化と並行するように産婦人科医も減少していますが、今こそ若い皆さんが産婦人科を担当し、社会に貢献する時だと思います。
 産婦人科医は、他の診療科とは異なり、生命の大切さや奥深さを実感できる診療科です。是非、我々と一緒に生命を紡ぐ医療を担ってください。

恵愛病院理事長

村上 弘一先生

やりたいと思えることができる。

 以前より産婦人科と心に決めていたわけではなく、学生の頃は興味はあったものの、科を迷うときに、産婦人科は選択肢には入っていませんでした。今思えば、初期研修中の自身の出産や、1ヶ月という短い期間ではありますが産婦人科を選択したことで産婦人科への興味が一気に強くなったことが入局するきっかけになったかと思います。他科と比べてどうかは分かりませんが、忙しくないと言えば嘘になると思います。ただ、やりたいと思えることができるというのは素敵なことで、どんな仕事でもそうだとは思いますが、この分野でがんばろうという気持ちがあるからこそ、やっていけるのかなと思ってます。
 育児に関して悩みは尽きませんが、理解をしてくださる先生方や相談に乗ってくださる先生方に囲まれて、「産婦人科が専門だ」と胸を張って言える日まで、日々、頑張っていこうという気持ちで過ごしています。少しでも産婦人科に興味ある方は気軽に声をかけて下さい。

金沢医療センター 産科・婦人科

井村 紗江先生

「おめでとう」という言葉が飛び交う場所。

 現在医師7年目(2018年4月現在)、産婦人科医としてはスタートを切ったばかりの私がこの科に興味を持ったのは大学5年の夏、帝王切開の手術を見学した時でした。静まりかえった部屋で手術が始まり、数分後、一つの産声とともに部屋中の空気が一変。その瞬間は今でも覚えています。生命誕生の瞬間、「おめでとう」という言葉が飛び交う場所、そんな産婦人科に魅せられたのが始まりでした。
 今年度に入りそんな私も正式に産婦人科医となり、今ではそれだけでない様々な魅力に触れています。腹腔鏡での手術、悪性腫瘍、内分泌・生殖など、幅広く活躍の場があること、そのどれもがまだまだ開拓できる可能性があること、あと個人的には手術時間がそれほど長くないこと(長時間立っていられないので)も魅力と感じています。
 学生・研修医には一度でいいからこの魅力にしっかり触れて欲しいというのが私の想いです。きっと何かが変わるはず。心からお待ちしています。

金沢大学医薬保健研究域医学系
産科婦人科学教室医員

野村 学史先生

北陸の女性のため精進を重ねていきたい。

 大学4年生まではスポーツ医学に憧れ、整形外科の道に進むつもりでした。実習でお産に感動したのが5年生の時。婦人科癌の治療に主体的に携わり、産婦人科医への道を決めたのが研修医2年目の時です。
 その後3年間の後期研修を経た今年、今までになくハイリスク妊婦を抱えた1年でした。気持ちが折れかけたこともありましたが、多くの患者さんに感謝され、励まされながらなんとか1年を終えようとしています。「普通に生まれてくるのが当たり前」の産科、「若い癌患者が増えている」婦人科。どちらも患者さんの苦痛は大きく大変な仕事ですが、やりがいもまた非常に大きく一生の仕事にする価値があります。娘も「遊んでくれるママも仕事しているママも好き」と言ってくれています。まだまだ若手の域を出ない私ですが、医師として、二人の子の母としても、産婦人科医の道を選んだことに後悔はありません。今後も北陸の女性のため精進を重ねていきたいと思います。

金沢大学医薬保健研究域医学系
産科婦人科学教室医員

茅橋 佳代先生