金沢大学医薬保健研究域医学系 産科婦人科学教室

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分子病理研究室

[研究室の概要]

本研究室は婦人科腫瘍発生のメカニズムを分子レベルで解明し、新たな治療法や診断法の開発を目指しております。関連病院に出向中の者や海外留学組も含め、10数名で構成されます。研究室員一同、臨床と研究の両立をモットーに、将来の臨床応用を視野に入れた研究をテーマとしております。また研究室では結果のみならず、そのプロセスを重視しております。研究を通じて科学的なものの見方、判断力、データ解析力、presentation の能力、緻密性、継続性などを磨き、それらを通じて臨床におけるセンスを研ぎ澄まし、個人のレベルアップをはかることを目標としております。
臨床では婦人科腫瘍全般を担当しております。広汎性子宮全摘術や傍大動脈リンパ節郭清といった難解な手術も、一つ一つの手技を感覚的ではなく論理的に標準化、ルチーン化し、メンバーの手術技量の向上に努めております。癌の治療方針はすべて高度なエビデンスに基づいてプロトコール化しています。癌治療にはチーム医療が必須です。研究で培った個々人の能力を臨床に反映させ、それがチームとして機能したときにはじめてハイレベルな医療が実践できると信じております。 癌化のメカニズムは今や分子レベルで解明されようとしております。臨床医だからと言って病気のメカニズムの解明に無関心でいることは許されません。癌化メカニズムの解明に興味を持ち、自らが研究を推し進めて行くことにより、より深く癌というものを知ることが出来るのだと思います。そしてその経験は必ずや臨床の現場で役に立ちます。研究者としてのフィルターを通して臨床を見つめ直すことが臨床面でのさらなるレベルアップに肝要であります。当研究室はこのような哲学の下に仕事で勝負する若手産婦人科医の土俵であると考えております。

[研究室の歴史]

分子病理研究室は1994年に井上教授が着任された1年後に京が米国より帰国したのを機に開設されました。以後、婦人科腫瘍発生のメカニズムを追求することによって病気の本質に迫り、最終的には新たな治療法の確立につなげることを究極の目標として仕事を進めて参りました。開設時、研究室員は1名。すなわち京一人でした。クリーンベンチや遠心機、ピペットを購入することから開始しました。約2年後に高倉正博先生が加わり、ようやく研究室の体をなし、その後毎年1-2名が加わってくれて(加わらされ?)現在では海外在住も含め10名以上が所属しております。
研究の発端は、京が米国で行っていたHPV研究に一応の区切りをつけ、当時細胞不死化メカニズムとして注目を集め始めていたテロメレースの研究を開始したことに始まります。能登半島の病院の暗い当直室で読んだScience誌のテロメレース活性検出法 (TRAP法) のエレガントさに感動しこの領域に踏み込むことを決意したのが懐かしい思い出です。まず始めに行ったのはテロメレース活性の検出です。テロメレースは細胞不死化酵素であり、多くの癌で活性化されていることが報告され始めておりましたので、早速この方法で婦人科癌組織のテロメレース活性検出を試みました。原法はRIを使った複雑なもので、もっと簡便に検出できないかと考えnon-RI法を考案しました。当時新米助手だった京は受け持ち患者を多数抱え、RIセンターに入り浸る時間的余裕がなかったので、苦肉の策でした。婦人科癌を対象として片端から試み、運良く実験開始から3ヶ月で第一報を公表することが出来ました。その後はテロメレース活性を指標とした癌の遺伝子診断や細胞診材料を用いたスクリーニングへの応用へと発展させました。特に毎田佳子先生は子宮内膜細胞診材料よりテロメレース活性を検出することで内膜癌のスクリーニングに応用できることを報告し、国際婦人科腫瘍学会のbest oral presentation賞を受けました。一方、京は子宮内膜癌のテロメレース活性を測定するための陰性コントロールとして用いた正常増殖期内膜に活性が検出されることを偶然発見しました。初めは私のテクニックの問題かと思い放置していたのですが、何度やっても同じ結果となるため思い切って投稿したところ、造血幹細胞や腸のcriptなど再生増殖の活発な組織にはテロメレース活性があるという概念が出始めた頃で、timely な話題として取り上げられました。結果的にこの発見は再生増殖を繰り返し続ける内膜の特性を反映したものだったのです。またテロメレース活性のみならずテロメアそのものを用いた遺伝子診断も有望で、毎田先生が組織切片上でin situにテロメア長を計測する画期的な方法により癌や前癌病変のテロメア長を計測し、成果を世界に問いました。テロメア長は癌化に伴い短縮することがわかっており、これを用いることで新たな遺伝子マーカーとして活用できそうです。また橋本学先生がテロメア末端構造の3’-overhangに注目し、この長さが癌の悪性 度と相関するという極めて興味深い結果を出しており、これも新たなマーカーとして期待されます。
第2の研究の柱はテロメレース活性化の分子機構の解析です。1997年にテロメレースの活性中心であった触媒サブユニットhTERTがクローニングされ、テロメレース活性の活性規定因子であることが明らかにされました。しかし、hTERT遺伝子発現のメカニズムは不明であり、テロメレースの癌細胞特異的発現機構は謎に包まれておりました。我々はHPVのE6/E7遺伝子のプロモーター解析を行っていた経験があり、プロモーターのクローニングや転写解析に関しては多少のノウハウを持っておりました。そこでhTERTプロモーターのクローニングに着手し、世界で初めてこのプロモーターのクローニングに成功致しました。当初はどうせ米国のビッグラボがクローニングするのだろうとあきらめていたのですが、非常にGC-richで特異な配列を持つこのプロモーターはクローニングしづらいものであったようで、毎月発刊されるjournalを見てはらはらしながら論文の受理を待っていたところ、幸いにも一番乗りとなりました。この仕事は高倉先生が寝食を忘れて取り組んだ成果です。この頃はプロモーターに作用する転写因子の同定やプロモーター活性化機構の解析に没頭しました。Myc(京)、EGF(毎田)などの増殖因子によるプロモーターへの直接作用、低酸素誘導因子HIFによる活性化(谷田部)、エストロゲンによる直接活性化作用(京)、プロゲステロンによる抑制作用(Wang)、p53による抑制作用(金谷)、ヒストン脱アセチル化による抑制(高倉)、Meninによる抑制(橋本)などを相次いで報告し、テロメレースの癌細胞特異的発現の分子機構の解明に貢献致しました。またhTERTプロモーターのクローニングは遺伝子治療のベクター開発へと大きく道を開くことになりました。癌細胞特異的に遺伝子発現をもたらすベクターの開発は遺伝子治療の領域では待ち望まれたものでありましたが、hTERTプロモーターはまさにそのような要求を満たすもので、MD Anderson Cancer Center, Mount Sinai Cancer Centerなどをはじめとして世界中からこのプロモーターを用いた共同研究の申し出が届くようになりました。中村充宏先生はhTERTプロモーター下に単球走化因子MCP1を組み込んだベクターを作製し癌細胞に導入したところ、MCP1によって寄ってきたマクロファージが癌細胞を貪食することを 確認し、著明な抗腫瘍効果および抗癌剤の作用増強があることを報告しました。また岡山大学との共同研究ではアデノウイルスにhTERTプロモーターを組み込み、癌細胞のみに感染して自律的に複製増殖し、細胞を融解するウイルスを作製しました。この件ではマスコミにも大きく取り上げられ、国際特許も取得しており、米国では癌患者を対象に臨床試験も始まっております。
第3の柱はテロメレース遺伝子導入による再生医療への応用です。正常細胞にhTERT遺伝子を導入してテロメレースを活性化し、細胞を不死化するプロジェクトです。ターゲットはこれまで長期培養が不可能であった子宮内膜細胞としました。京は国立がんセンターウイルス部の清野先生との共同で、Rb活性化経路をHPV E6/E7を利用して遮断した上でhTERTを導入してこの細胞の不死化に世界で初めて成功しました。この細胞は正常内膜細胞の性質を保持したまま不死化しており、内膜研究には欠くことのできない材料となっています。また水本泰成先生はこの細胞の特定の遺伝子に変異を導入して癌化するに成功しました。これらは正常内膜を遺伝子操作により癌化させた世界初の画期的な成果であります。近い将来、これら一連の研究が内膜癌の画期的な診断法や治療法の開発へとつながることを夢見て奮闘中です。
第4の柱はテロメレース阻害による癌治療への応用です。中村充宏先生はhTERTをsi-RNAのテクニックにより特異的に阻害することで癌細胞に老化を誘導することに成功しました。さらに水本先生との共同で、このテロメレース阻害が放射線や抗癌剤の感受性を増強させることを見いだし、テロメレース阻害剤と既存の癌治療法との併用の有効性を理論的に証明しました。谷田部典之先生はテロメレースの構成成分であるhTRに対する2-5A antisense oligoを用いて癌細胞のテロメレース活性を阻害することに成功しました。この際、テロメア短縮に依存しない早期の細胞死が起こることを報告し、テロメレース阻害による細胞死の未知の分子機構にも迫っております。
第5の柱として内膜癌の癌化メカニズムを追い求める研究も行って来ました。金谷太郎先生は最も早期の遺伝子変化としてミスマッチ修復系の異常がすでにhyperplasiaの段階から予想以上に高頻度に起こっていることを見いだしました。この結果を受け、坂口純子先生は内膜癌化過程においてミスマッチ修復系の異常がTGF-beta receptor, PTENなど様々な遺伝子に変異を誘発して癌化を引き起こすことも確認しております。
以上の成果は平成24年まで140報以上の英語論文となり(Impact factor 710点)、国内外にその成果を問うて来ました。現在でも8カ所の研究施設と共同研究が進行中であります。これらの成果を受けて2002年には日米がん研究協力事業セミナーを主催させて頂くことが出来ました。多くの方々のご協力により一応の成果は残すことが出来たと考えておりますが、問題は今後の方向性であります。言うまでもなく産婦人科教室は臨床教室であります。論文業績を積み上げることが研究の目的ではなく、日常臨床のなかで取り上げた問題を解決して、最終的には患者さんに還元される明確な方向性を持った研究を実践することが究極の目的であります。このことを肝に銘じて今後の研究に取り組んで行きたいと考えております。 (文責 京 哲)。

[メンバー]

※は現在研究室にて仕事をしているメンバー

京  哲
金沢大学産婦人科 臨床教授
高倉 正博
金沢大学産婦人科 学内講師
金谷 太郎
金沢医療センター産婦人科 医長
谷田部典之
加藤レディースクリニック
中村 充宏
金沢大学産婦人科助教
毎田 佳子
金沢大学産婦人科、薬理学教室助教
橋本 学
まなぶクリニック院長
水本 泰成
金沢大学産婦人科 助教
森  紀子
公立松任中央病院 医長
生駒 友美
いこまともみレディースクリニック院長
保野由紀子
金沢大学産婦人科 大学院
大野 智
金沢大学補完代替医療講座 准教授
坂口 純子
福井済生会病院薬剤部
藤井 玲名
金沢大学産婦人科 大学院
張秀 智
金沢大学産婦人科 大学院
王  卓
Indiana University留学中
東  朋美
金沢大学衛生学教室 助教
尾崎 聡
金沢大学附属病院病理部

[業績〈英文論文〉2013]

Maida Y, Kyo S, Lassmann T, Hayashizaki Y and Masutomi K.
Off-target effect of endogenous siRNA derived from RMRP in human cells.
Int.J.Med.Sci. in press.

Nakamura M, Takakura M, Fujii R, Maida Y, Bono Y, Mizumoto Y, Zhang X, Kiyono T and Kyo S.
The PRB-dependent FOXO1/IGFBP-1 axis is essential for progestin to inhibit endometrial epithelial growth.
Cancer Lett. in press.

Itoh F, Komohara Y, Takaishi K, Honda R, Tashiro H, Kyo S, Katabuchi H, Takeya M.
Possible involvement of signal transducer and activator of transcription-3 in cell-cell interactions of peritoneal macrophages and endometrial stromal cells in human endometriosis.
Fertil.Steril. in press.

Zhou K, Koike C, Yoshida T, Okabe M, Fathy M, Kyo S, Kiyono T, Saito S, Nikaido T. Establishment and Characterization of Immortalized Human Amniotic Epithelial Cells. Cell Reprogram. 15: 55-67, 2013.

Kyo S. Endometrial cancer stem cells: Are they a possible therapeutic target?
Curr.Obstet.Gynecol.Rep. 2:1-10, 2013.

Yokoyama T, Enomoto T, Serada S, Morimoto A, Matsuzaki S, Ueda Y, Yoshino K, Fujita M, Kyo S, Iwahori K, Fujimoto M, Kimura T and Naka T.
Plasma Membrane proteomics identifies bone marrow stromal antigen 2 as a potential therapeutic target in endometrial cancer.
Int.J.Cancer.132: 472-484, 2013.

[研究費および知的資産取得状況]

科学研究費【平成24年度】

過去の科学研究費はコチラ

日本学術振興会科学研究費補助金(文部科学省科学研究費補助金)

平成24(2012)年度

井上 正樹(研究代表者)
  • 基盤研究(B)【新規】
    「婦人科癌における末梢血中腫瘍細胞からの遺伝子変異及びトランスクリプトームの解析」
京  哲(研究代表者)
  • 基盤研究(B)【継続】
     「卵巣チョコレート嚢腫上皮の不死化、癌化による多段階発癌モデルの構築と分子標的探索」
  • 挑戦的萌芽研究【継続】  「腫瘍増殖型ウイルスを用いた血中循環がん細胞の検出と卵巣癌再発予測への応用」
高倉 正博(研究代表者)
  • 基盤研究(C)【継続】
    「癌幹細胞を標的とした婦人科癌治療ならびに腫瘍細胞イメージングシステムの構築」
中村 充宏(研究代表者)
  • 基盤研究(C)【新規】
     「子宮内膜癌幹細胞の解析と難治性癌治療法開発への応用」
毎田 佳子(研究代表者)
  • 若手研究(B)【継続】
     「エキソソームによる子宮内膜の細胞間情報伝達の分子機構と内膜癌化に関する基礎研究」
水本 泰成(研究代表者)
  • 基盤研究(C)【新規】  「癌間質線維芽細胞を標的とした新たな子宮内膜癌治療戦略の開発」  分担研究とその他の研究費
井上 正樹
  • 厚労省基礎研究成果臨床推進研究事業  「WT-1癌抗原ペプチドを用いた癌の免疫療法の開発」(2006~2012)
  • 共同研究経費(株式会社医学生物学研究所)  「新規HPV-DNA型判別試薬を用いたHPV遺伝子型の頻度調査」(2011~2012)
京  哲
  • 基盤研究(C)分担(研究代表者:小中弘之)   「核内受容体・NF-κBクロストークを標的とした去勢抵抗性前立腺癌に対する治療戦略」(2011~2013)
  • 基盤研究(C)分担(研究代表者:北川育秀)   「テロメア動態と上皮間葉移行機序を応用した血管内浮遊癌細胞に対する治療戦略」(2012~2014)
  • 共同研究経費(持田製薬株式会社)   「不死化子宮内膜細胞を用いたプロゲステロン・ジェノゲストの薬理作用の検討」(2008~2012)
  • 共同研究経費(オンコリスバイオファーマ株式会社)
    「TelomeScan(OBP-401)の婦人科癌診断への応用」(2010~2012)
  • 共同研究経費(日本新薬株式会社)
    「ノルエチステロンおよびエチニルエストラジオールのヒト不死化子宮内膜症上皮細胞に及ぼす分子機構の解明」(2011~2012)

[臨床内容の紹介]

婦人科腫瘍への取り組み

婦人科癌診断、治療全般を担当しておりますが、特に下記の治療には特色を出して重点的に行っております。
全ての婦人科癌の治療方針は世界標準のコンセンサスに基づいてプロトコール化し、北陸にいながらにして世界標準の治療を安心して受けて頂けるよう実践しております。

  1. 子宮頚部異形成、上皮内癌に対するLeep (Loop electrosurgical excision procedure) conization(子宮頚部円錐切除術)

    毎週水曜日に病棟で行います。当日あるいは一泊二日(どちらか希望により)で退院可能です。ループ型電極を用いた電気メスによる円錐切除術で、切除と同時に止血が可能なため、縫合操作が不要で10分程度で終了します。多くの方が子宮頚部周囲への局所麻酔のみで問題なく行っており,これにより処置後すぐの退院も可能です。翌週に外来で傷口のチェックを行った後,3ヵ月後,その後は6ヵ月後の細胞検査を行い再発が無いことを確認いたします。当研究室では5年間に約200例の治療実績を有しております。

  2. 子宮頚癌に対する トラケレクトミー(広汎子宮頚部摘出術)

    若年の子宮温存希望のある頚癌の患者さんに対して最近行われつつある術式です。円錐切除術では不十分な浸潤がん(臨床進行期1期)の患者さんが対象となります。子宮頚部のみを広汎子宮全摘術の原理で摘出し、その後子宮体部と膣を繋いで子宮を再建します。子宮を栄養する血管(子宮動脈)を温存しながら行ったり、頚部の切除範囲を厳格に決定する必要があり、広汎子宮全摘に精通した術者のみが行える究極の術式です。当研究室でも平成24年度からこの手術を開始し、良好な結果を得ております。子宮頚癌にて子宮摘出が必要と診断された患者さんは一度御相談下さい。

  3. 良性腫瘍に対する内視鏡手術あるいは小切開手術

    良性の卵巣腫瘍などに対する腹腔鏡手術、子宮筋腫に対する子宮鏡下手術を積極的に行っております。これらの良性疾患に対しては、80%程度は内視鏡下で手術を行っているのが現状であります。子宮筋腫の大きいものでも下腹部3-5cmの小切開下に筋腫核出術を(癒着のある症例では腹腔鏡併用による小切開下筋腫核出術を)行っております。症例によっては10cm程度の筋腫でも3cmの傷で摘出することが可能です。また腹腔鏡手術も、腹部の切開創が一つで済む単孔式を最近では多く取り入れております。

  4. 子宮癌、卵巣癌に対する集学的治療

    良性の卵巣腫瘍などに対する腹腔鏡手術、子宮筋腫に対する子宮鏡下手術を積極的に行っております。これらの良性疾患に対しては、80%程度は内視鏡下で手術を行っているのが現状であります。子宮筋腫の大きいものでも下腹部3-5cmの小切開下に筋腫核出術を(癒着のある症例では腹腔鏡併用による小切開下筋腫核出術を)行っております。症例によっては10cm程度の筋腫でも3cmの傷で摘出することが可能です。また腹腔鏡手術も、腹部の切開創が一つで済む単孔式を最近では多く取り入れております。

    子宮頚癌

    手術療法と放射線化学療法を治療の2本柱としております。臨床進行期が1-2期の比較的早期の癌では広汎子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清術による根治手術を基本としております。この手術は他の手術に比べ比較的合併症が重いため、70歳までの患者様に行っております。70歳以上の患者様には1-2期であっても放射線化学療法をお勧めしています。手術療法と放射線科学療法は基本的には同等の効果があると考えられ、どちらを選択するかは患者様の希望を前提に年齢や合併症の有無などにより決めることになります。当科では北陸で最も早くから放射線化学療法を取り入れており、多くの症例の集積と治療成績を有しております。
    広汎子宮全摘術においては当科のモットーは手術の合併症をできるだけ少なくしながら、切除範囲(radicality)を最大限に確保することであります。広汎子宮全摘術は婦人科手術で最も複雑で時間がかかる手術ですが、当科では止血に血管シーリングという方法をいち早く取り入れており、おおよそ3時間で出血量300-500mlで終了させております。特に血管シーリングを基靱帯、直腸腟靱帯、膀胱子宮靱帯前層、後層の処置に用いることにより、ここ数年で手術時間と出血量が大幅に改善されております。また骨盤神経叢はもちろんのこと、膀胱子宮靱帯および傍腟結合織の処理の際には神経温存を徹底させる結果、術後の排尿障害も低レベルでおさまっております.

    子宮内膜癌

    手術療法と放射線化学療法を治療の2本柱としております。臨床進行期が1-2期の比較的早期の癌では広汎子宮全摘術と骨盤リンパ節郭清術による根治手術を基本としております。この手術は他の手術に比べ比較的合併症が重いため、70歳までの患者様に行っております。70歳以上の患者様には1-2期であっても放射線化学療法をお勧めしています。手術療法と放射線科学療法は基本的には同等の効果があると考えられ、どちらを選択するかは患者様の希望を前提に年齢や合併症の有無などにより決めることになります。当科では北陸で最も早くから放射線化学療法を取り入れており、多くの症例の集積と治療成績を有しております。
    広汎子宮全摘術においては当科のモットーは手術の合併症をできるだけ少なくしながら、切除範囲(radicality)を最大限に確保することであります。広汎子宮全摘術は婦人科手術で最も複雑で時間がかかる手術ですが、当科では止血に血管シーリングという方法をいち早く取り入れており、おおよそ3時間で出血量300-500mlで終了させております。特に血管シーリングを基靱帯、直腸腟靱帯、膀胱子宮靱帯前層、後層の処置に用いることにより、ここ数年で手術時間と出血量が大幅に改善されております。また骨盤神経叢はもちろんのこと、膀胱子宮靱帯および傍腟結合織の処理の際には神経温存を徹底させる結果、術後の排尿障害も低レベルでおさまっております。

    子宮内膜癌

    基本的には手術療法を原則にしております。子宮頚がんとの違いは、放射線への感受性が頚癌ほど高くは無いということであります。手術で子宮摘出後、取り出した癌組織を顕微鏡でつぶさに観察して再発のしやすさ、リスクを厳重に評価します。その結果、再発のしやすさを段階に分け(リスク評価)、それに応じて術後追加療法を行うことになります。当科での術後追加療法は、中リスクの患者様には放射線療法を、高リスクの患者様には抗癌剤による化学療法をお勧めしております。

    卵巣癌

    進行がんでは初回手術により癌病巣を徹底的に摘出する手術(腫瘍減量手術)と、抗癌剤による化学療法をセットで行うことになります。ごく初期の癌では卵巣機能、妊孕性を温存できる場合もあります。初回手術でどれだけ完全に腫瘍を摘出できるかが治療成績に大きく影響いたします。当科では消化器外科、泌尿器科と密接に連携し,大腸や小腸、膀胱などに浸潤した癌をも完全に摘出すべく最大の努力を払っております。各科との連携による集学的治療の成否が卵巣癌の治療成績に大きく影響するのです。
    術後の抗癌剤投与は卵巣癌治療の基本でありますが、副作用には多くの患者様が不安を持たれていることでしょう。しかしながら、当科では医師による説明はもちろんのこと、病棟専属薬剤師によるきめ細かい薬剤相談、説明を行っており、さらには看護スタッフ作製のオリジナルパンフレットなどを用いた患者様のための抗癌剤レクチャーもあり、安心して治療を受けていただくことができます。

  5. 婦人科腫瘍の妊孕性温存治療

    若年者の婦人腫瘍は子宮、卵巣という妊娠にからんだ臓器が対象であるだけに事態は深刻ですが、子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌のいずれにおいても一定の条件を満たせば妊孕性温存手術が可能です。ただし、病気が癌であるだけに安易な温存術は危険です。妊孕性温存の条件は子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌ごとに異なり、専門医による高度なエビデンスレベルに基づいた判断が必要です。当科では妊孕性が温存可能な癌の条件をエビデンスに基づいて厳格に規定していますが、妊孕性と根治性という相反する問題をギリギリのところで両立させるべく、細心の配慮の下に治療方針を患者様と相談しながら決めさせていただいております。ぜひ気軽にご相談下さい。

  6. 細胞診のプロ集団による適切な細胞、病理診断

    婦人科腫瘍の治療を受ける大前提として、治療前の診断がきちっとなされていることが重要であります。通常、癌かどうかを決定する細胞、病理診断は病理医によってなされ、臨床の現場にいる主治医はそのreportを読んで治療に取り掛かるわけです。しかしながら、実際に癌の治療を行う臨床医は、癌の悪性度などの情報を自らの目で確かめて、治療を行うのが鉄則であります。これは当研究室のフィロソフィーであります。このような考えの下、当研究室ではすべてのスタッフが細胞診専門医を取得するよう義務付けております。現在6名のスタッフが細胞診専門医を取得して細胞診断の実践と指導を行っております。

[写真集]

過去の写真集はコチラ

保野先生 学位審査公聴会終了祝い H24年11月5日

保野先生 学位審査公聴会終了祝い H24年11月5日

保野先生の学位審査公聴会は盛況に終わりました。白熱した質疑応答も立派にこなし、医学博士に相応しい力量をみせてくれました。
保野先生、誠におめでとうございました。
お祝いに食事会を開催しました。
保野先生のリクエストで市内のTaverna Gappaというイタリアンレストランで行いましたが、美味しかったです。静かな雰囲気の店ですね。ここはインリスト〔別冊の方〕が超充実してますよ!
なかなかおすすめです。

北陸GOG講演会に慈恵医大岡本教授御来澤

北陸GOG講演会に慈恵医大岡本教授御来澤

平成24年10月12日に北陸GOG(Gynecologic Oncology Group)の講演会がホテル金沢で開催されました。特別講演には慈恵医大の岡本愛光教授をお招きし、卵巣癌治療最前線のお話しをしていただきました。講演会後の2次会の席でも、大変気さくな岡本先生と研究室員一同楽しい一時を過ごさせていただきました。

高倉先生 論文受理祝い H24.6.11

高倉先生 論文受理祝い H24.6.11

高倉先生の論文が受理されたのを祝い、香林坊に繰り出しました。今回は高倉先生のリクエストによりバリ料理です。バリ料理って個人的には生まれて初めてです。かなりスパイシーなのかな?と予想してましたが、以外にマイルドで、全く普通でした。美味しかったです。FRANGIPANI1という店ですが、お勧めです!
この後はいたるに繰り出し、最後はいつもの一風堂ラーメンで締めました。ダイエット中の先生も、これで2週間分ぐらいの苦労が無駄になったでしょうか(笑)。

本年度のラボメンバーです。

本年度のラボメンバーです。

大学院生の卒業とテクニシャンの移動により少なくなりましたが、少数精鋭といきたいところです!

北陸GOG講演会に慈恵医大岡本教授御来澤

北陸GOG講演会に慈恵医大岡本教授御来澤

保野先生の論文受理を祝って、石亭ですき焼きパーティーを致しました。いつもはイタリアン、フレンチが多いんですが、ここのすき焼きはかなり上質でした。お勧めです。保野先生もこの論文にはかなりのエネルギーを注ぎ込んだので喜びもひとしおのようでした。

[研究室ニュース]

過去の研究室ニュースはコチラ

子宮内膜癌幹細胞をターゲットとした新規治療に関する総説論文の受理

総説論文
Endometrial cancer stem cells: Are they a possible therapeutic target?
Satoru Kyo.
Curr.Obstet.Gynecol.Rep. in press.
子宮内膜癌の治療にがん幹細胞をターゲットにするという新しい発想で将来展望を述べさせていただきましたが、その発想自体にワクワクしながらの執筆は楽しい時間でした。幹細胞を標的とする手法に既存の抗癌剤をどのように絡めてゆくのか?ということがkeyであると思われます。

高倉先生 論文受理! H24.5/30

ここ1年高倉先生が鋭意取り組んできた血中の循環がん細胞の検出法に関する論文がBritish Journal of Cancerに受理されました。
Circulating tumor cells detected by a novel adenovirus-mediated system may be a potent therapeutic marker in gynecologic cancers
Masahiro Takakura, Satoru Kyo*, Mitsuhiro Nakamura, Yoshiko Maida, Yasunari Mizumoto, Yukiko Bono, Xiuzhi Zhang, Yuuri Hashimoto, Yasuo Urata,Toshiyoshi Fujiwara, and Masaki Inoue
癌患者の血液中には癌細胞が循環しているということがわかってきましたが、それをどうやって識別して診断するのかという話題がここ数年活発化しております。
今回の研究では血液中の癌細胞を光らせて検出するという大変ユニークな手法を開発致しました。
我々の方法は、血液中の光った癌細胞を、蛍光顕微鏡下で見ながら直接分離回収できるのが特徴で、回収した癌細胞のDNA, RNA解析も可能となります。様々な臨床応用が期待され、今からワクワクしております!

症例報告論文受理! H24.3/21

久々に症例報告をさせて頂きました。チョコレート嚢腫のラパロ術後の胸腔内出血! という大変珍しい症例ですが、勉強になりました。症例報告を通じて疾患や病態に精通することの重要性を痛感しました。
Kyo S, Takakura M, Nishida S, Ozaki S, Oda M and Inoue M.
Massive hemothorax due to diaphragmatic endometriosis after a laparoscopic cystectomy of an ovarian endometrioma in a patient without a history of thoracic endometriosis.
Arh.Gynecol.Obstet. in press.

保野先生の論文がBritish Journal of Cancer に受理されました!(H24.1/16)

保野先生が全身全霊を傾けて実験に取り組んだ成果がようやく実を結びました。子宮内膜症の上皮細胞を精密に分離、純化して、細胞周期を回転させる遺伝子の操作により不老不死化した細胞を初めて作成することに成功しました。
これを機に内膜症研究、特に内膜症の癌化研究に弾みがつきそうです。
保野先生、ますます頑張って下さい。
Bono Y, Kyo S, Takakura M, Maida Y, Mizumoto Y, Nakamura M, Nomura K, Kiyono T and Inoue M.
Creation of immortalized endometrial epithelial cells from ovarian endometrioma.
Brit.J.Cancer in press.

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