金沢大学医薬保健研究域医学系 産科婦人科学教室

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婦人科診療紹介

金沢大学産科婦人科では、全ての婦人科疾患の診断、治療を行なっていますが、特にこのセクションでは、当院で治療に力を入れている疾患、新しく行なっている治療法等について説明します。当科での診断・治療は原則として医師全員参加によるミーティングで決定されます。様々な分野の専門家がお互いに意見を出し合うことで、よりよい医療を患者様に受けていただくとともに、医療者間の治療への認識を統一することが可能になります。

[婦人科癌]

  • 子宮頸癌表示する

         

    子宮頸癌は子宮頸部に原発する癌です。治療法や予後の違いから子宮体部に発生する癌(子宮体癌)とは区別されています。ヒトパピローマウイルスの感染が発病に関与していることが知られており、近年は発病の若年化が問題となっています。
    子宮頸癌に対する治療は手術と放射線療法です。手術では子宮とその周辺組織を一塊として摘出する広汎子宮全摘術が行われますが、この術式は周囲の臓器へ与える影響が大きく産婦人科の手術の中では難易度が高いものの一つです。当科では複数の日本婦人科腫瘍学会専門医が在籍しており患者様に安心して治療を受けていただけるように努力いたしております。
    また、ごく早期癌の方では病変部のみを切除して子宮を残すことが可能な場合もあります。
    手術で摘出できる範囲をこえて腫瘍が広がっている可能性がある方や、高齢で手術に耐えられないような方に関しては放射線治療を行っています。当院放射線科では放射線源を極めて細い誘導針で操作するマイクロセレクトロンが使用可能であり、これまでは困難だった部位への選択的な照射が可能となっています。加えて放射線治療に抗癌剤投与を併用する治療が有効というデーターが最近、世界各地から報告されています。我々も5年前からこの治療法を取り入れ良好な治療結果を得ています。

  • 子宮体癌は子宮内腔を内張している子宮内膜という組織から発生する癌で、同じ子宮癌でも子宮頚部にできる子宮頚癌とは区別されます。女性ホルモンであるエストロゲンの過剰状態が発症に関与していると考えられています。従来は日本人の子宮癌の中では少数派だったのですが近年の生活様式の欧米化に伴い日本でも増加してきています。
    子宮体癌の治療は主に手術療法さらに放射線療法・抗癌剤による化学療法を組み合わせたものが主流です。基本的な手術では子宮・卵巣・卵管の摘出と骨盤リンパ節の廓清が行われますが、病変が子宮頚部におよんでいる場合は子宮頚癌と同様に広汎子宮全摘術を行う場合もあります。
    術後の追加治療としては病変の広がり具合などによって放射線療法・抗癌剤による化学療法のどちらかあるいは両者の組み合わせを用います。近年タキサン系抗癌剤が使用されるようになり比較的軽い副作用で効果をあげるようになってきています。

  • 卵巣にできる腫瘍にはさまざまな種類のものがあります。ホルモン分泌があって特有の症状があるものもありますが、多くのものは症状に乏しく、腫瘍が大きくなったり腹水が貯まったりして初めて気がつく方がほとんどです。
    卵巣癌にたいする治療は基本的に手術による腫瘍の摘出とそれに引き続く抗癌剤を用いた化学療法です。卵巣癌は比較的化学療法が効きやすい癌です。現在、当科ではタキサン系薬剤とプラチナ系薬剤を組み合わせた化学療法を行っております。抗癌剤の副作用に関しては副作用自体が少ない薬剤の開発が進んできたことや、各種の補助薬品(制吐剤や白血球を増やす薬など)が開発されたことで、かなり改善されてきています。また、外来管理での化学療法などにも取り組んでおり、できる限り患者様の生活の質を損なわずに治療を受けて頂けるよう努力いたしております。

  • これまで悪性腫瘍にたいする抗癌剤を用いた化学療法は長期間の入院を必要としてきました。しかし近年の薬剤の進歩は入院不要の化学療法を可能とするようになってきました。
    具体的には卵巣癌・子宮体癌などの化学療法を週1回のペースで外来で行っております。現在使用される薬剤は主にタキサン系抗癌剤で一回治療の所要時間は2時間程度と短く、また吐き気や白血球減少などの副作用も比較的軽いため、患者様の社会生活を妨げることなく治療が受けられるようになっております。

  • 腹壁に開けた小さな穴から内視鏡や鉗子を挿入し手術を行う方法です。傷が小さく後が残りにくいのはもちろんですが、術後の回復が早いため入院期間が短くてすみます。
    腹腔鏡手術の適応になる良性疾患には、卵巣嚢腫・子宮内膜症・異所性妊娠・子宮筋腫・不妊症の検査と治療、などがあります。実際に腹腔鏡の治療が適しているかどうかは個々のケースによって違います。

  • 子宮口から入れた内視鏡で子宮内の病変を治療する手法です。子宮粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープなど、子宮内の病変に限られますが患者様への侵襲は非常に小さく治療をすることが可能となります。


  • 子宮頚癌発癌に対するHPVの関与については、これまでに当産科婦人科学教室の研究成果を始めとする数多くの基礎研究の蓄積があります。子宮頸癌のスクリーニングにおいても、細胞診とHPV検査の組み合わせが有効であることに疑問の余地はありません。
    しかし、それをいざ通常の住民検診に応用しようとすると、普及活動に多大な労力が必要となり、経済効率の点も問題になって、今のところ全国的な広がりを見せるにはいたっていません。当教室を中心とした関連病院の協力のもとに、平成15年度より石川県全体でのパイロットスタディが行われ、さらに平成16年度からは全国に先がけて、金沢市子宮がん検診(すこやか検診)の受診者を対象に、細胞診だけでなくHPV検査の導入が開始されました。HPV検査の導入が検診精度を向上させることのさらなるエビデンスを求めて、今年度も努力が続けられています。
    平成15年度の石川県での結果では、同意の得られた検診受診者8,156人全員に細胞診とHPV検査が施行されました。その結果、細胞診のみでは軽度異形成以上の病変を検出する感度が69.0%であったものが、細胞診とHPV検査を組み合わせることによって94.2%にまで上昇することが確認されました。
    平成16年度の金沢市での検診は経済的効率が考慮され、検診受診者13,240人のうち、細胞診において明らかな陰性となった場合と要精検が確定した場合は除外され、400人がHPV検査対象となりました。そのうち細胞診が陰性でもHPV陽性となることもあり、本来細胞診のみでは検出することのできなかった29人に軽度異形成以上の病変を検出することが可能でした。さらにこの方法では、検診者一人当たり約100円の負担増加のみ(金沢市が負担)でHPV検査の導入が可能であることも明らかになりました。今後は検診効率と経済効率をさらに高いレベルで求めるため、隔年で子宮がん検診を行うかわりに検診対象者全員にHPV検査を行うなど、さらなる工夫を行政担当者との話し合いで進めています


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